365日からふるに子育て!第16回~子どものことばを豊かに育むための接し方~
「次世代へ健やかな未来をつなぐ」ウェルサポの言語聴覚士、平田です。
前回はインリアルアプローチの基本姿勢についてお話ししました。今回はそのインリアルアプローチの具体的な技法についてお話しします。
基本姿勢「SOUL」のおさらい
インリアルアプローチとは「子どものコミュニケーションの特性を知り、他の人とコミュニケーションをとることができるように周りの大人が援助の仕方を学ぶ手法」です。その基本姿勢には4つあります。
- 子どもをありのまま受け入れて静かに見守る(Silence)
- 子どもの興味や遊びをよく観察する(Observation)
- 子どもの気持ちや発達レベルを深く理解する(Understanding)
- 子どもが表現しようとしていることに心から耳を傾ける(Listening)
この4つの頭文字をとって「SOUL(ソウル)」と呼びます。このSOULの特徴は、周りの大人が関わり方を工夫することで、子どもの表現したい気持ちを育て、ことばの力を育てようとするところです。
ではさっそく、「7つの技法」の具体的なアプローチ方法をご紹介しましょう。
インリアルアプローチの7つの技法
①ミラリング:子どもがやっていること(動作)をそのまま真似する
「子どもが両手をあげたら大人も同じように両手をあげる」というように、子どもの行動をそのまま真似することで、子どもは「何かすれば、大人は反応してくれる」という関係性に気が付きます。
②モニタリング:子どもが出している音声やことばをそのまま真似する
ミラリングが動作の真似。一方でモニタリングは音声の真似です。「真似すること」は、相手に共感や理解を示す効果があります。あまり言葉を発さない段階の子どもにもおすすめの技法です。自分の動作や声を真似してくれたという共有体験により、子どもは声を出す楽しさを感じます。また、楽しさにつられて親と目を合わせる効果も期待できます。
③パラレルトーク:子どもの行動や気持ちを言語化すること
例えば、子どもが転んでしまったとき、 『お膝をぶつけたね、痛かったね』と子どもに伝えることで、同じ状況にあったときに“ぶつけて痛い”と言えるようになっていきます。また、ことばと体験・気持ちを一致させることで、感情制御力の向上にも繋がります。 遊びの場面では、汽車の真似をしている子どもに対して、大人が『シュッシュッ』と音をいうことも子どもの語彙力を広げていく効果があります。
④リフレクティング:子どもの言い間違いを正しい言葉で子どもに返すこと
意味・文法・使い方などの間違いを、正しい言葉に置き換えて子どもに伝えることで、子どもは適切な言葉を身に付けていくことができます。子どもがイヌの人形をもって「にゃぁ、にゃぁ」と言っていたら『ワンワン』と正しい音で返します。 間違ったときこそ「ことばがけ」のチャンスです。間違いを指摘するのではなく、『うん、可愛いワンワンだね』など、笑顔でさりげなく言い換えることがポイントです。
⑤エキスパンション:子どものことばに1つ情報を加えて返事をすること
例えば、子どもが「わんわん」と言いながらイヌの人形を動かしていたら、大人が『わんわん!フサフサしているね』などと新たな情報を付け加えて伝えることで、子どもの言葉を少しずつ拡張していきます。また、子どもが車を見かけて「車!(名詞)」と言ったとき、大人が『車、来たね(名詞+動詞)』と動詞を付け加えて伝えます。 もしも子どもが「車!来た!(名詞+動詞)」と言えたら、今度は大人が『ほんとだ!黒い車、来たね(形容詞+名詞+動詞)』とさらに1つの情報を加えることで返すことで、バリエーションを増やすことにつながります。
⑥セルフトーク:大人自身の行動や気持ちを言語化すること
パラレルトークと同様に、「あなたとコミュニケーションをとりたいよ」という意図を伝え、大人の視点から行動とことばの結合を促します。例えば、ボール遊びをしているとき、大人がボールを投げながら『ママも、ポーン!投げるよ!』と、ことばを添えます。
⑦モデリング:子どもの状況に沿いながら、新しいことばを示すこと
線路を通る電車を見ながら「デンシャ!」という子どもに、『電車だね!ピューン!速いね!』など、新しいことばや表現方法を伝えます。見た目やスピード感など、名詞とは異なる表現方法を得ることにつながります。
子どもとのやりとりを全身で楽しもう!
「ここまでインリアルに関する文章を読んだから、さっそく頭に入れて明日からやってみなきゃ!」と考える必要は決してありません。『7つの技法』とその具体例を読んでみると、1つ1つの技法の中になんとなく子どもとのやりとり場面が想像できたのではないでしょうか。それで良いのです。
ことば(バーバルコミュニケーション)だけではなく、ジェスチャーや表情など(ノンバーバルコミュニケーション)もコミュニケーションの手段として取り入れることができます。子どもと一緒に「あっ!」と驚いてみたり、指差しの先にあるものを見て共感してみたり、笑い合ってみたり、抱きしめてみたり。そんなことも大切なコミュニケーション手段なのです。
おわりに
何かを無理矢理やらせようとしたり、ことばを言わせようとするのではなく、自由な遊びや生活のなかで、自然な形でコミュニケーションを楽しむことが、子どものことばを豊かに育むことに繋がっていきます。子どもとのやりとりを全身で楽しむことに、もし行き詰ったら、このインリアルの記事をもう一度読んで、イメージを膨らましてみてくださいね。
<ウェルサポについて>
臨床経験豊富なフレンドナース(かかりつけナース)が、利用者自身の身心の相談はもちろん、子育てや介護、ご家族の健康に寄り添ったオンラインのチャット相談を行っています。他にも、オフラインで行う定期訪問サポートやアテンドサポートなど行っています。社会福祉士、健康運動指導士、助産師、管理栄養士などの専門家や他サービスとも連携して、利用者とそのご家族の「自分らしい健やかな暮らし」をサポートしています。
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平田 真弓(ひらたまゆみ)
言語聴覚士歴22年。こども発達支援研究会認定講師。
慢性期病院・訪問リハ・養成校非常勤講師の他、福岡赤十字病院に17年の臨床経験を経て、現在は放課後等デイサービスや児童発達支援事業所などへ出張言語療法・保育所等訪問の他、「ことばの発達や発音が気になるお子さん」向けの個別セッション等の個別活動を行っている。
好きなことはこどもやママ友とワイワイ騒ぐこと。プライベートは小1・小4・中1の野球少年を育てるパワフルママ
ライター紹介
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