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男性目線で『男性育休白書』を解説!育児や家事との向き合い方を考えよう

『男性育休白書』をご存知ですか?積水ハウス株式会社が、2019年からはじめた47都道府県のパパ・ママを対象にした育休の実態調査です。

積水ハウスグループは「男性社員1ヵ月以上の育児休業完全取得」を推進しています。この男性育休白書も「日本でも男性の育児休業が当たり前になる社会へ」をコンセプトにした社会活動の一環として調査、発表しています。

<具体的な調査内容>

1.全国各都道府県別に小学生以下の子どもがいる20~50代の男女9400人を対象とした男性の家事・育児 力実態調査と育休取得に対する意識調査
2.マネジメント層を対象とした男性社員の育休取得に対する意識調査
3.2022年4月に改正施行された「育児・介護休業法」の効果と影響について

以上の3つです。

この記事は2022年の『男性育休白書』を分かりやすく解説するとともに、男性目線で育児や家事との向き合い方を考えていく内容となっています。下記URLより、2022年度版『男性育休白書』をダウンロードできますので、この記事と合わせてご覧ください。
https://www.sekisuihouse.co.jp/ikukyu/research/

男性育休白書の企画背景

積水ハウスグループが企業理念の中で「私たちの事業の意義」として掲げる「人間性豊かな住まいと環境の創造」という点が男性育休白書を企画した背景にあります。

人間性豊かな住まいと環境を創造するためには、男性の家事・育児に参加することが必要であり、そのため育児休業の一般化を推進しています。

そんな積水ハウス株式会社が男性の育児・家事力の実態調査を始めた当初は『イクメン白書』という名前で発行していましたが、2021年に『男性育休白書』と改めています。

また、積水ハウス株式会社は子育てを応援する社会を先導する「キッズ・ファースト企業」として2018年9月より、男性社員1ヵ月以上の育児休業完全取得を推進しています。そして男性の育休取得をよりよい社会作りのきっかけとしたいという思いから『男性育休白書』を発表しています。

男性の家事・育児力を示す指標

この白書の中では、男性の家事・育児力全国ランキングを数値化して発表するために、独自の4つの指標を設定しています。

1.女性の評価

■男性が行う家事・育児の数

まずは、女性が認める男性の家事・育児の実践数です。
主に、食事作りやゴミ出し、掃除や洗濯、子どもと遊ぶなどの28項目を挙げて男性が普段から行っているものを選んでもらいました。その結果、全国平均の家事・育児の実践数は5.9個となっています。

■男性の家事・育児への関与度

次は男性が子育てを楽しみ、家事や育児に積極的に関与するかどうかを女性に聞くものです。「とてもそう思う+2.00」「ややそう思う+1.00」「あまりそう思わない-1.00」「まったくそう思わない-2.00」の4段階で評価をしてもらった結果、全国平均は0.40でした。

2.育休の取得経験

男性の育休取得日数

指標2つ目は男性の「育休取得経験」で、男性が取得した育休取得日数を基準としています。全国平均を算出した結果8. 7日でした。

3.家事/育児時間

女性が認める男性の1週間の家事・育児時間

3つ目は男性の自己申告ではなく、女性から見た男性の家事や育児時間を数値化しています。勤務日と休日それぞれ1日の家事・育児時間を聞き、1週間の家事・育児時間を算出した結果、全国平均は12.4時間でした。

4.家事/育児参加による幸福感

■男性の家事・育児幸福度

4つ目は、男性自身が家事や育児を行うことに幸せを感じるかを聞いた家事・育児幸福度です。
男性自身に4段階「幸せを感じている+2.00」「やや幸せを感じている+1.00」「あまり幸せは感じていない-1.00」「幸せは感じていない-2.00」で答えてもらった結果、全国平均は0.93でした。
『男性白書』では、これら4つの指標を総合的に判断して男性の家事・育児力を数字化しています。この方法により全国平均を出した結果、0.93となり、「やや幸せを感じている+1.00」よりも少ない数字が出てしまいました。

家事・育児を行うことに幸せを感じると、自然と女性の評価も上がるのでは無いかと思います。逆に義務的に行うと、もちろん辛いことや手間だと感じることが増えます。普段から家事や育児をしていることへの感謝を伝えることがお互いの家事・育児による幸福度を上げるためには重要では無いでしょうか。

男性の育休取得実態

男性の育休取得率は17.2%、前年から5.0ポイント増加しています。
20代では24.9%と育休取得率が最も高く、4人に1人が育休を取得している調査結果になっています。2022年の育休取得日数は年代別で見ると20代が13. 0日、30代が10. 5日と前年よりも5日も長くなっています。

実際に育休を取得した男性の家事・育児に関わる時間は顕著に増加しており、コロナ禍以前からの変化を聞いた所、育休を取得した男性の7割近くが家事や育児に関わる時間が増えたと回答しています。

リモートワークが家事や育児に参加するキッカケとなった

2022年の『男性白書』の中で、私が特に気になったのがリモートワークと男性の育休取得についての調査内容でした。

なぜコロナ禍以前から比較するのかというと、コロナ禍により場所の成約を受けずに自宅などで業務をするリモートワークという働き方が一般化したためです。自宅で業務を行えるようになった結果、全体の約半数の家事時間が増加しました。

家事時間の割合は20代男性では59.9%、30代男性では53.3%と多く、リモートワークを行う男性では63.3%と一段と多くなっています。育児時間も同様の傾向を見せており、全体の48.2%が育児時間が増えたと回答しています。20代男性は55.1%、30代男性は52.1%、リモートワークをする男性の61.5%が育児時間が増えたと答えています。

このように、リモートワークをする男性は家事・育児時間が増えており、リモートワークは男性の家事・育児参加のキッカケになっていますリモートワークをする男性の8割が「家事・育児の時間を確保しやすくなった」(80.6%)と答えており、20代男性では86.7%とさらに高くなっています。

リモートワークが減るとどうなる?

有職者全員に出社頻度が増えると男性の家事・育児の確保が難しくなると思うかと聞いたところ、そのうち男性の7割が「難しくなる」(66.8%)と答え、20代男性では74.8%が「難しくなる」と答えました。リモートワークをしている人では、8割が「難しくなる」と答えています。

この数値から分かるようにリモートワークが、男性の家事・育児への参加に影響を及ぼしています。
「リモートワークで家事・育児の時間を確保しやすくなった」ことが理由となっています。

もちろん、時間の確保が要因の1つではありますが、家族と共有する時間が増えたことも要因の1つでは無いかと考えています。家族と接する時間が多い分「洗い物をしておけば喜ぶかな?」「子どもと遊んで喜ぶ顔が見たい」と考える回数が増えたのでは無いでしょうか。

リモートワークが減り家事や育児の時間を確保できなくなった場合でも、夕食は家族全員で食べる、家族と話す時間を増やすなど家族との時間を確保することが大切では無いかと考えます。

また、コロナ禍による働き方の変化で育休を取得することができたと思うかと聞くと半数以上が「そう思う」と答えました。

調査によると、コロナ禍によりリモートワークという働き方が普及し、男性の家事・育児の参加時間が増加したことは非常に素晴らしいことなのですが、新たな課題として「リモートワークがあれば育休不要」という声もあるそうです。

リモートワークをしている男女1816人に、リモートワークで育休取得の必要性を感じなくなったかと聞くと、男性の半数近くが「必要性を感じなくなった」(46.2%)と答えています。対して、女性は(27.2%)と少ないことから、女性はリモートワークであるかどうかに関わらず育休取得は必要と考えています。

リモートワークで育休取得の必要性が男性と女性でズレがあるということは、家事や育児に対する負担は、女性の方が多い可能性があります。

男性の育休取得によるポジティブな影響

男性に男性の育休取得は仕事に好影響を与えるかと聞いた所、6割が「仕事に好影響をもたらす」(61.6%)と答えています。男性の育休取得による仕事へのポジティブな影響は個人的な話にはとどまりません。

ポジティブな影響は組織と個人の関係性構築にも及ぼしており、育休取得男性に復帰した後のアンケートでは、「仕事の生産性向上に役立った」(69.7%)「会社への愛着が増した」(50.1%)と答えています。さらに、仕事への好影響だけでなく、夫婦の気持ちにもプラスの効果をもたらしています。

育休を取得した男性は「妻の負担を理解できるようになった」(30.3%)と回答した男性が最も多く、女性も3割が「夫が自分の負担を理解してくれるようになった」(27.0%)と答えています。男性の育休取得は仕事、家庭に置いてもプラスの効果をもたらしています。

男性の育休取得に関する意識

男性の育休取得に賛成するかという質問に対して男性(85.9%)、女性(87.2%)が賛成をしています。しかし、女性に自分の夫に育休を取得させたいかと聞くと、「取得させたい」と答えた女性は63.0%と少なくなっています。

男性の育休取得に賛成する女性に対して、自分の夫に育休を取得させたいと答えた女性が少なくなっているのは、制度としては賛成するが自分の家庭には必要が無いと考えている女性が一定数いることもありますが、他の要因で取得させたいと思えない可能性もあります。

金銭面はもちろん、会社の上司との人間関係や出世できなくなるのではといった心配など様々な問題が隠れています。会社の上司との人間関係や出世の問題など、目に見えない問題は夫婦で話し合いを行うことが大切です。男性の育休が当たり前になるには、どのような問題があるのか考えることが大切なのではないかと感じています。

家事・育児に幸せを感じている

調査の中で、家事と育児について男性がどのように感じているかという点も気になりました。男性は家事や育児を行うことに幸せを感じると思うかと聞くと、男性の81.4%が「幸せを感じる」と回答。

女性は64.9%が男性が家事・育児に幸せを感じていると思うと回答していることから、女性が考えている以上に男性は家事・育児に幸せを感じているようです。

家事・育児に幸せを感じているのになぜ育休を取得しないのか男性に聞いた結果、4割が「本当は取得したかった」と回答しています。

取得しなかった理由として

「育休制度が整備されていない」(30.4%)
「周囲に迷惑を書けてしまう」(30.3%)
「給料・手当が下がる」(29.6%)

が挙げられました。

取得しなかった理由として上げられた上記3つは会社の整備的な問題が大きいため、個人でどうにかできる問題です。そのため、いち早く男性の育休を一般化することが大切です。女性の負担を軽くする、子どもと触れ合う時間を増やすために長期間の育休を取得できない場合は、有給や年休を利用し1日単位で休暇を取るなどが対応策として考えられます。

男性の育児参加を一般化することで男性の育休が一般化する流れを作ることが大切なのではと考えます。

育休取得に対する不安

育休取得を検討した男性に検討時に不安を感じたかという質問に対して男性の回答は61.1%が「不安を感じた」と答えました。

不安に感じたことを聞くと、

「いつまで休むのかしつこく聞かれ、休みづらさを感じた」(岐阜県34歳)
「男なのに育児休業を取るのかと言われ、悲しかった」(岩手県38歳)

などのつらい経験も寄せられました。

男性の育休には年代によるズレなどの問題も根深く残っています。
男性の育休取得は認められた権利ですが、現実として取得しやすい職場の人間関係構築などの問題もあります。

育休を取得する前の周囲への情報提供など取得に向けた準備も行い、急な話にならないように育休を取得する予定日などを伝える必要もあります。

男性の家事や育児との向き合い方について考える

現状では、男性の育児休業は特別という認識に変化はありませんが、徐々に一般的な選択肢として広がりをみせています。この育児休業が特別という認識は「男性が家事や育児をすることが特別という認識から来ているのでは?」と思います。

共働き家庭においては、育児休業の取得により夫の意識や家事・育児スキルが上がり妻の職場復帰を早めることにもつながります。また、育児休業により夫の家事・育児が日常的になれば、妻のワンオペ育児や家事負担増加が防げます。パートナーや家族としての幸福度も上がり、妻のキャリアアップなど家計収入も増えるのではないでしょうか。

そのことで夫も「自分ひとりが稼がなければならない」責任感から解放されるかもしれません。育児休業の取得が一般的になることはとても大切なことですが、本質的に大切なのは、男性の家事・育児への参加です。

男性の家事・育児への参加があたりまえになれば、夫婦の幸福度も上がります。男性の家事・育児へ参加が家族との関係を良い方向に構築することだと捉え、向き合うことからまずはじめてみませんか。

働き、その対価を稼ぐことは家族で幸せに生活するために大切ですが、家事・育児も同じく幸せな家族生活を送るための大切な仕事なのです。

参考:積水ハウス『男性育休白書』2022.9

https://www.sekisuihouse.co.jp/ikukyu/research/

木村 俊紀
20代、フリーのライター、記事を読んでくれた方の悩みや課題を解決できる助けになれればと思い文章を書いています。

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