365日からふるに子育て!第4回:乳幼児期のことばの発達とマスク生活
「次世代へ健やかな未来をつなぐ」 ウェルサポの言語聴覚士、平田です。
今回は「マスク生活と乳幼児期(0~5歳)のことばの発達の関係性」についてお話しします。
1. ことばの発達について
子どもの発達は個人差があり、ことばの発達もひとりひとり異なります。ことばの発達には「話す力」、「ことばを理解する力」、「やり取り(コミュニケーション)の力」が必要です。
これらの力が育つには心と体の成長が欠かせません。
睡眠や生活習慣、食事、身の回りのことなどの生活経験が発達を促し、ことばの発達の基礎になります。このように日常生活という土台となる基礎作りをしっかりと行い、積み上げていくことが大切です。
また、生まれながらにして発達する力をもっている子どもたちですが、ことばの発達は一人で成長するものではありません。両親や兄弟・祖父母や先生たちとの“子どもからのはたらきかけ”と“それに応じようとする大人”という関係性の中でコミュニケーションの基盤が構築されていきます。
~さて、突然ですが上の写真の女性は今どのような気分か分かりますか?~
「嬉しい?」「楽しい?」「怒っている?」「おなかすいた?」…?
withコロナで、今やマスク生活が定着され新しい生活様式になっています。
感染症防止対策のためではあるものの、一方で発達科学の専門家からは、『長期間のマスク生活が与える、子どものことばやコミュニケーションの発達・社会性や心理面への影響』など、子どもを取り囲む大人のマスク着用による弊害を不安視する声が聞かれます。
マスクの問題点:口元や顔全体の表情を見る経験が激減
- 声がききとりにくい
- 相手の口元の動きが見えないため、表情がわかりづらい
これらはすべて、子どものことばやコミュニケーションの発達に必要な経験や情報です。
先に挙げた写真のように、マスクにより相手の口元がブロックされる、表情が見えないなどの状況は、大人でも相手のことがわかりにくいものです。子どもたちは、多くの人がマスクをしていることで、他者の表情や口の動き、口元から発せられる音声など、顔全体の豊かな動きや音を見聞きする経験を得ることが難しくなっています。
2. ことばの発達に必要なこと
子どものことばやコミュニケーションの発達は、耳で聴く・目で見て口の動きを学ぶ・身体で触れる・相手の表情や視線などを読み取り気持ちを察するなど、さまざまな感覚器官を通して獲得していきます。
また、周囲の人との触れ合いやことばのやりとり、順番交替しながらお互いの気持ちなどを伝え合うことでコミュニケーション能力が育まれます。
3. コロナ禍における『ことばの発達を育むための環境を守る』関わり方や心がけ
感染症防止対策も大切ですが、子どものことばの発達を育む環境を守っていくことも同時に大切です。では、どのように両立させればいいのでしょうか。
大事なことは、
‟コロナ前より家庭での関わりを意識して”
‟外では密を避け家庭では密を作る”こと
だと考えます。
マスク生活が当たり前の環境になっている今、限定された環境の中だけでもマスクを外してコミュニケーションの機会を子どもに提供することです。
例えば、おうちの中で
- ママやパパの豊かな表情を意識的に見せてあげる
- 目と目を合せたコミュニケーションを意識する
- 理解しやすい長さのことばをゆっくり、はっきりと伝える
- お口の動きをしっかり見せてことばを育む遊びやコミュニケーションを楽しむことを心がける
などが挙げられます。さらに、乳児期はことばに加え触れられることで脳が活性化することも明らかになっています。たくさんのボディータッチと共に言葉かけを行いましょう。
◆色々な声を聞かせて、いっぱい触れてあげる
おもちゃで一緒に遊んで、色々な声を聞かせる、色々な感覚遊びを通して体にいっぱい触れましょう。子どもは相手の表情を見たり、真似をしたりすることで、気持ちを汲み取り、感情表現を覚え、ことばの発達が促されます。
◆絵本の読み聞かせで子どもの心や表情を豊かにする
読み聞かせは絵本を通して、親子のコミュニケーションが心地良く持続します。子どもを膝の上に抱っこして読み聞かせをすることで、スキンシップしながら声や笑顔を交わすことができます。また、ことばの発達を促し子どもの心や表情も豊かにしてくれます。
おわりに
マスク生活が続く中でも、子どもたちは日々成長しています。コロナ前まではこんなにも口元に注目することはなかったかもしれません。しかし、口は人間が生きていく上で、食事をし、コミュニケーションを行うために欠くことのできない大事な器官です。
口の動かし方を見てことばを覚えたり、口角が上がっているのを見て、喜んでいる・嬉しい・機嫌がいいと気持ちを推し量ったりします。
また初めて見る食べ物をパパやママが食べているのを見て自分も食べたいと思ったり、口元が見えることで様々な感情や刺激を受け取ることができます。
一日も早いコロナの収束を願いつつ、おうちの中では、子どもとしっかり目を合わせながらお話したり、笑い合ったり、楽しく食事をすることが子どもの豊かな発達につながります。仕事に子育てに慌ただしい毎日ですが、子どもたちの未来のために、パパやママに出来ることを少しだけ意識して過ごしていきたいですね。
<ウェルサポについて>
臨床経験豊富なフレンドナース(かかりつけナース)が、利用者自身の身心の相談はもちろん、子育てや介護、ご家族の健康に寄り添ったオンラインのチャット相談を行っています。他にも、オフラインで行う定期訪問サポートやアテンドサポートなど行っています。社会福祉士、健康運動指導士、助産師、管理栄養士などの専門家や他サービスとも連携して、利用者とそのご家族の「自分らしい健やかな暮らし」をサポートしています。
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〇ライター紹介
平田 真弓(ひらた まゆみ)
言語聴覚士歴22年。こども発達支援研究会認定講師。
慢性期病院・訪問リハ・養成校非常勤講師の他、福岡赤十字病院に17年の臨床経験を経て、現在は放課後等デイサービスや児童発達支援事業所などへ出張言語療法・保育所等訪問の他、「ことばの発達や発音が気になるお子さん」向けの個別セッション等の個別活動を行っている。
好きなことはこどもやママ友とワイワイ騒ぐこと。プライベートは小1・小4・中1の野球少年を育てるパワフルママ。