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365日からふるに子育て!第10回~子どものことばを豊かに育むための接し方~

「次世代へ健やかな未来をつなぐ」ウェルサポ言語聴覚士、平田です。今回は「子どものことばを豊かに育むための接し方」についてお話しします。

1.「ことばのシャワー」は本当に効果があるの?

「ことばが遅いような気がする」「検診で相談したけれど、もう少し様子をみましょうといわれた」など、ことばに関して不安をもつ保護者の方から多くの相談が寄せられます。

育児書やインターネットを調べると、「たくさん話しかけましょう」「ことばのシャワーをたくさん浴びせましょう」と記されていることが多くあります。

しかし、私たちことばの専門家はそのようにはお伝えしません。確かに、ことばを聞かせることはとても大切です。しかし、一日中がむしゃらに話しかけ続け、何冊も絵本を読み聞かせたとしても、これまでの体験では、あまり効果が期待できないように感じます。

大人も、聞いたことがない外国語を一日中聞かされても理解が難しいですよね。それと同じように、子どもにとって受け取りやすい方法とタイミングで話しかけ、且つ大人もこどもとのスキンシップを楽しみながら、話しかけてあげることがとても大切です。

2.ことばの発達を促すための土台作り

ことばの発達を促すための土台作りとして、最初にすべきことはなんでしょうか。それは「子どもと視線を合わせること(アイコンタクト)」です。

「え?そんなこと?」と思われるかもしれませんが、意外とできていないもの。実は大人の視線の先は子どもではなく、子どもが遊んでいるオモチャに向かっていることが多いのです。

ことばは、『コミュニケーションの道具の1つ』です。意識せずに身に付けてきた私たち大人にとっては、年齢と共に自然に習得していくもののように感じますが、習得には周囲とやりとりをするときの環境が大きく作用します。
なぜなら、自分の要求や気持ちを「分かってもらえた!」という満足感、「伝えたい!」という意欲があってこそ『生きたことば』に繋がっていくからです。生きたことばを育んでいくためには、やりとりの満足感や意欲を豊かにする環境を整えてみることが大きな手助けとなります。

3.家庭でことばを引き出すために「インリアルアプローチ」を取り入れよう

土台作り(子どもと視線を合わせること)に慣れてきたら次のステップです。子どもと大人が相互的に関わりながら、ことばや反応を引き出す方法に『インリアルアプローチ』というものがあります。

これは「子どものコミュニケーション特性を知り、コミュニケーションの力がより豊かになるように“周りの大人”が援助の仕方を学ぶ」手法のことです。ことばは、無理矢理に教え込むものではなく、大人との相互的なやりとりの中で育まれていきます。

インリアルアプローチにおける『大人の基本姿勢(SOUL)』をご紹介

「S」Silence➡子どもをありのまま受け入れて「静かに見守る」
「O」Observation➡子どもの興味や遊びを「よく観察する」
「U」Understanding➡子どもの気持ちや発達レベルを「深く理解する」 
「L」Listening➡子どもが表現しようとしていることに「心から耳を傾ける」

具体的なシーンで解説:お子さんが車のおもちゃで遊ぶ

大人は、床を道路に見立てて車のオモチャを走らせてみたり、傾斜になっている坂の上で車のオモチャを手から離して坂を滑り降りていくスピードを楽しんだり。または人形を運転手に見立てて乗せようとする、、、といった遊び方を連想する方が多いのではないでしょうか。

大人は「車」がどのようなものかよく知っていますから、当然のことだと思います。そこで、カチカチと車のオモチャ同士をぶつけて遊ぶ子どもを見ると、手を制して「これはね、こうやって遊ぶのよ」と教えたくなることもありますよね。もちろん、用途や意味を教える目的で、遊び方を伝えることは、知識習得や経験となり子どもの視点が変わるきっかけになるので良いことです。

しかし、今回ここで登場するのが『Soul』の考え方です。
あえて子どもを静かに見守り(Silence)行動や発語を観察(Observation)してみましょう。観察するものはオモチャではなく、子どもの表情、行動、オモチャをどのように扱っているか、興味はどこに向いているのか、どのタイミングで大人と目を合わせようとするのか、などたくさんあります。

静かに見守っていると、子どもの「伝えたい」「分かってほしい」のタイミングをきっと多く感じ取ることができます。子どもに対して良き聴き手であることは、単に耳から入る言葉を聞き取ることではなく、子どもの表す様々なサインを全身で感じ取っていくことも含まれます。表情の変化や指差し、うなずきも大切な表現方法のひとつです。日々の関わりの中でどんなサインが発せられるのか大人も楽しんでみましょう。

どうしたら良いのかわからない時は、この2点に集中

①子どもの目を見ること

繰り返しになりますが、子どもと目を合わせること(アイコンタクト)はコミュニケーションの大切な土台となります。子どもが何を見ているのか、どんな表情をしているのか、見てみましょう。もしかすると、視線の先はオモチャや絵本ではなく、パパ・ママの表情であるかもしれません。

②子どもに任せてみる

「絵本はどんどんページをめくるんじゃなくて、ほら、きちんと絵を見て!」と促すのではなく、子どもが起こしたアクションに大人がついていく。あくまでも子どもが主体の遊びを楽しみます
子どもが絵本のイラストを見ず、次々にページをめくっていても、絵本を逆さまにしていても⁉子どもが何を楽しんでいるのか想像しながら大人も童心に返ってみてください。

4.おわりに

信頼できる大人が寄り添い、気持ちに共感し、同じ目線で遊ぶことで見られることばの量や質の変化は、コミュニケーションを行う上で大切な基礎になります。

①静かに
②観察して
③理解して
④子どものことばや行動に耳を傾ける。


『インリアルアプローチ(Soul)』 ぜひ実践してみてくださいね。
次回の私の項では、7つのテクニックを通して、より具体的なインリアルアプローチをご紹介したいと思います。お楽しみに!

<ウェルサポについて>

臨床経験豊富なフレンドナース(かかりつけナース)が、利用者自身の身心の相談はもちろん、子育てや介護、ご家族の健康に寄り添ったオンラインのチャット相談を行っています。他にも、オフラインで行う定期訪問サポートやアテンドサポートなど行っています。社会福祉士、健康運動指導士、助産師、管理栄養士などの専門家や他サービスとも連携して、利用者とそのご家族の「自分らしい健やかな暮らし」をサポートしています。

一般財団法人ウェルネスサポートLab(ウェルサポ)
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メールアドレス:info@wellsuppo.or.jp  
電話番号:092-231-9762 

〇ライター紹介

平田 真弓(ひらた まゆみ)言語聴覚士歴22年。こども発達支援研究会認定講師。

慢性期病院・訪問リハ・養成校非常勤講師の他、福岡赤十字病院に17年の臨床経験を経て、現在は放課後等デイサービスや児童発達支援事業所などへ出張言語療法・保育所等訪問の他、「ことばの発達や発音が気になるお子さん」向けの個別セッション等の個別活動を行っている。好きなことはこどもやママ友とワイワイ騒ぐこと。プライベートは小1・小4・中1の野球少年を育てるパワフルママ。

ライター紹介

一般財団法人ウェルネスサポートLab 

ウェルサポ

臨床経験豊富な看護師がフレンドナース(かかりつけナース)となり、自身の身心の相談はもちろん、子育てや介護、ご家族の健康に寄り添ったオンラインのチャット相談を通して、「不安不調期から取り組む健やかな暮らし」のサポートを行う専門家チーム。

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